2018年03月01日

月刊  企業経営サポート情報 bO88

◆改正民法における保証規定の見直しについて

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2018.03.01

弁 護 士  安 達 一 彦

1.民法改正の概要について
 民法(債権法)改正を内容とする「民法の一部を改正する法律」が平成29年6月2日に公布され、平成32年6月2日午前0時までに政令で定める日に施行することとなった。
 現行民法は、明治29年4月27日公布であるので、約120年ぶりの改正である。
 改正は多岐にわたるが、「社会経済の変化への対応を図る」目的の改正であり実務に大きな影響を与える改正として、@保証人保護の拡充A債権譲渡の禁止特約の効力の制限B消滅時効制度の改革C法定利率の改革があげられる。

2.保証債務の見直しの要点について
 保証債務については、保証人保護の拡充のために以下の規定が新設された。
(1)個人保証の制限
(2)契約締結時の情報提供義務
(3)主債務の履行状況に関する情報提供義務
(4)主債務が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務

3.個人保証の制限について
(1)個人保証の制限に係る原則規定
 改正民法465条の6が新設され、原則として「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約」または「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約」は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければその効力を生じない。」旨個人保証が制限された。
 保証人に対する公正証書による保証債務履行の意思の確認規定をおくことにより、保証人を保護する必要性は、保証の無償性、保証の情義性、保証の利他性及び保証の軽率性等保証契約の特殊性に由来する。
特に、事業者向け融資は、@中小零細事業者の場合でも保証の金額が相当高額となることが多く個人で弁済することが困難である場合があること、A保証責任の追及を受けた個人が生活破綻し破産や自殺に追い込まれる例が散見され保証被害の発生が社会問題化していることが個人保証制限規定を設けた背景となっている。
(2)公正証書作成が免除される例外規定
 主債務者と関連性の強い下記一定の者が保証人となった場合、例外として公正証書作成が免除されることとした。(下記一定の者については、公正証書の方式によらない保証契約であっても保証責任を負担することになる。)

㋐役員等による保証
役員等とは、主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれに準ずる者をいう。
㋑支配株主等による保証
支配株主とは、主たる債務者が法人である場合のその総株主の議決権の過半数を有する者又はこれに準ずる者をいう。
㋒共同事業者等による保証
共同事業者とは、主たる債務者と共同して事業を行う者または主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者をいう。
 今後、金融実務において保証人に依存しない融資が促進されるものと思料する。








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2017年01月04日

月刊・企業再生サポート情報 bO80

◆未払い金 立替払い制度の活用を
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2017.01.01


1.未払賃金立替払制度の内容

 未払賃金立替払制度は、企業の倒産によって賃金や退職金が支払われないまま退職した労働者に、国が事業主に代わって未払賃金の8割を立替払いする制度である。(但し、退職時の年令に応じた上限額がある。)

 この制度は、「賃金の支払の確保に関する法律(昭和51年法律第34号)に基づく制度であり、実施機関は「独立行政法人労働者健康安全機構」である。

2.支給実績

 平成23年度の支給実績は、企業数3682件、支給者数4万2637名、
 立替払額約200億円となっている。

3.要件

(1)事業主に関する要件 

  @ 労災保険の適用事業の事業主かつ1年以上事業の実施
  A 倒産したこと
   ア 法律上の倒産
    破産手続開始の決定(破産法)、
    特別清算開始の命令(会社法)、
    再生手続開始の決定(民事再生法)、
    更正手続開始の決定(会社更生法)

   イ 事実上の倒産(中小企業事業主のみ)
    事業活動停止、再開見込みなし、
    賃金支払能力なし(労働基準監督署長の認定)

(2)労働者に関する要件
  破産手続開始等の申立て(事実上の倒産の認定申請)の6ヵ月前
      の日から2年前に退職

4.立替払の額

  未払賃金総額の8割

    但し、下記のとおり限度がある。

=記=
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5.支払の根拠が争われる事例

(1)請求者は労働者か
   ア 労働者であるか賃金台帳、出勤簿等客観的資料が
     乏しく認定が困難な場合がある。
   イ 経営者の親族について、勤務実績が乏しい事例がある。
   ウ 建設手間請け従事者について、仕事の依頼や
     業務従事指示等に対する諾否の自由がある事例がある。
     (経営者の指揮監督を受けているとみられない場合、
      労働者性が希薄である。)

(2)退職金請求の根拠はあるか
  労働契約、労働協約、就業規則(退職金規程等付属規程を含む)により、
  退職金の支払いが労働条件となっていないのに、退職金の立替払請求が
  なされる場合がある。

結語

 税理士の皆様方は、企業の倒産時において労働者の賃金が未払いのままとなっている状況を認識することがあろうかと存じます。

 このような場合、賃金未払のまま退職せざるを得なかった労働者の生活を守るため事業主及び労働者に対し、未払賃金の立替払制度の活用を提言されることを望みます。



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2016年04月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO71

◆濫用的会社分割と詐害行為取消権について
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2016.4.01


 第二会社方式の新設分割において、優良資産や優良事業のみ新設会社に承継させ、特定の債権者を不当に害する目的で当該債務を承継しない会社分割がなされる場合があります。
かような濫用的会社分割がなされた場合、不利益を被った債権者はどのように救済されるのでしょうか。

1.詐害行為取消権の行使を認容するか

 民法第424条は、下記のとおり詐害行為取消権について規定しております。

【民法第424条】
 1.債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
 2.前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

 濫用的会社分割がなされた場合でも、詐害行為取消を認容するべきではないと考える立場の根拠は、@会社分割は会社の組織に関する行為であり財産権を目的としない法律行為であるところ、民法第424条2項は、財産権を目的としない法律行為は詐害行為取消権の対象とならないと規定していること、A会社分割は、株主、従業員、取引先等多くの者の利害に関わる組織行為であり、法的安定が尊重されるべきであることにあります。
 最判平24.10.12判決は、「株式会社を設立する新設分割がなされた場合において、新設会社にその債権に係る債務が承継されず、新設分割について異議を述べることもできない分割会社の債権者は、詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる。」と判示しました。(ちなみに、本判決はいわゆる濫用的会社分割に関する初めての最高裁判決です。)

2.分割会社が新設会社から何らかの対価を取得した場合、
   詐害行為取消を認容するか

 分割会社が新設会社に対し優良資産等を譲渡した際に、新設会社から@何らの対価を取得しなかった場合A対価として新設会社の株式を取得した場合B対価として現金を取得した場合等が考えられます。
 分割会社が何らの対価を取得しなかった場合は、詐害行為取消を認容すべきと思料します。
 それでは、分割会社が新設会社から対価として新設会社の株式を取得した場合はどのように考えたら良いでしょうか。

 東京高判平22.10.27判決は、「新設分割の対価である新設会社株式は、債権者にとって換価などに著しい困難を伴うから、分割会社の一般財産の価値が毀損され、本件の新設分割に詐害性が認められ、また、債権者が分割によって承継した資産を特定して返還させることは著しく困難である。」として詐害行為取消権の行使を認容しました。
 確かに、新設会社の株式は、換価の困難性があるうえ、分割会社において第三者に対し無償譲渡をなす等債権者を害する処分がなされ易いものであり、詐害行為取消権の行使を認容することは妥当と思料します。
 次に、対価として分割会社が現金を取得した場合は如何でしょうか。
新設会社から譲渡された資産等につき適正な鑑定評価がなされたうえ評価額相当の現金の交付があった場合詐害行為取消権の行使を認容するか否か、判例の集積が待たれるところです。

3.詐害行為取消の効果は、絶対的なものか相対的なものか

 詐害を理由とする新設分割取消の効果について、詐害行為取消を主張した債権者の債権保全に必要な範囲でのみ相対的な取り消しを認めるのが一般的です。詐害行為取消の効果を絶対的なものとすると、債権者のみならず株主、従業員等会社分割に関わるすべての当事者に悪影響を及ぼす(例えば、分割会社の従業員と新設会社との間の雇用契約が無効となる)ので、詐害行為を主張する債権者に対してのみ詐害行為取消の効果を認める相対的取消が相当と思料します。
 なお、相対的取消の効果として、譲渡された不動産等資産の返還を認容するか、譲渡対象資産を適正に評価のうえ評価額相当の価格賠償を認容するか、今後の判例の集積が待たれるところです。

4.会社法第764条の新設について

 前記最判平24.10.12判決が出現して間もなく平成26年会社法改正により下記のとおり会社法第764条が新設され、濫用的会社分割がなされた場合、新設会社等に債務が承継されない債権者による新設会社に対する履行請求制度が設けられました。

【会社法第764条】
 1.新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する。
 2.前項の規定にかかわらず、第810条第1項第二号(第813条第2項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定により異議を述べることができる新設分割会社の債権者(第810条第2項(第三号を除き、第813条第2項において準用する場合を含む。以下この項及び次項において同じ。)の各別の催告をしなければならないものに限る。次項において同じ。)が第810条第2項の各別の催告を受けなかった場合には、当該債権者は、新設分割計画において新設分割後に新設分割会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、新設分割会社に対して、新設分割会社が新設分割設立株式会社の成立の日に有していた財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。



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2015年07月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO64

◆特定調停制度について
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2015.8.01



 日弁連では、中小企業金融円滑化法が平成25年3月末日に終了し、中小企業が金融機関から債務弁済猶予等の支援を得られなくなる事態を懸念し、中小企業の事業再生に資するため最高裁判所、経済産業省と協議し、特定調停制度を活用するスキームを策定し、平成25年12月から特定調停スキームの運用が開始されています。
 今後、事業再生のために特定調停スキームを利用するケースが増大することが予測されますので、ご紹介したいと存じます。


1.特定調停の目的について

 特定調停は、平成12年2月17日施行の特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(民事調停法の特例として制定)に基づく調停制度であり、支払い不能に陥るおそれのある債務者又は弁済期にある債務を弁済することが困難である債務者等が負っている金銭債務に係わる利害関係の調整を促進することを目的としております。
 申立人(申立人代理人弁護士)が、税理士・公認会計士・中小企業診断士等の専門家と協力して経営改善計画案を策定し、金融機関である債権者と事前調整を行ったうえ、当該金融機関を相手方として申立をいたします。


2.調停成立の可能性について

 調停とは、申立人と相手方の互譲により双方の妥協点を調整し話し合いにより和解を成立させる制度です。
 金融機関が調停案に同意しない以上、特定調停制度は機能しないのではないかと考える方がいらっしゃると思いますが、多くの金融機関は、計画改善計画案に合理性がある限り裁判所からの調停案を受諾するものと思料します。
 仮に、調停案を拒絶する金融機関が存在した場合、申立人は裁判所に対し、元利金減免、分割弁済等を返済条件内容とする民事調停法第17条決定(調停に代わる決定)を発令するよう求めます。

【民事調停法第17条】
 「裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認める ときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平 に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事 件の解決のために必要な決定をすることができる。」
 金融機関が17条決定に対し告知を受けた日から2週間以内に異議の申立をしない場合、17条決定は裁判上の和解と同一の効力を有することになります。
 なお、金融機関の異議申立が合理性を欠く場合、異議申立は権利濫用に該当し無効とすべきではないかということが議論されております。

3.債権放棄が行われた場合の税務上の取り扱いについて

 日弁連と日税連は、国税庁に対し、債権放棄についての税務上の取扱いについて照会をしたところ、国税庁は平成26年6月27日に下記のとおり回答いたしました。


     1.債権者について
        当該債権放棄の額の全額について損金算入を認める。

     2.債務者について
        債務免除益について青色欠損金の損金算入を認める。
        (期限切れ欠損金の損金算入をも認める。)


 最近「ワンストップサービス」が注目されておりますが、特定調停申立の際添付書類として計画改善計画案の提出が要求されており、そのため税理士・公認会計士・中小企業診断士等の助力が必要なこと、税務処理について税理士の関与が必須なこと等勘案すると、特定調停制度は「ワンスットプサービス」の適例ではないかと思料しております。


以 上





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2014年11月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO56

★再生と詐害行為取消権について
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2014.11.01



 債務超過の状況にある債務者が、再生のために不動産を売却したり、担保権設定をしたり、あるいは一部債権者に債務を弁済したりすることがある。
 一方で、民法第424条は、「債権者は、債務者が債権を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。」と規定し、債務者が財産を減少させる行為をしたときこれを取り消す権利(詐害行為取消権)を認めている。
 再生をしたい債務者の利益と債務者の責任財産(強制執行の引当てになる債務者の財産)を保全したい債権者の利益の衝突をどのように調整したらいいのだろうか。

1.不動産の売却について

 大審院判例は、不動産の売却は、価格が相当であっても詐害行為となるとする。(大判 明治39.2.5)
 これを支持する学説は、不動産が現金に代わってしまうと債務者に勝手に使われてしまう可能性が高まるから詐害行為として取消しを認めるべきと主張する。
 これに反対する学説は、財政危機に陥った債務者が再生のために不動産を売却し売却代金を資金繰りに使用する途をふさぐことは経営再建の努力を阻害することになるので、相当価格での売却は詐害行為とならないと主張する。

 ところで、破産法第161条は、相当価格による財産処分を否認する要件として「破産者において、隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分をするおそれを現に生じさせるものであること」を要するとし、原則相当価格による財産処分を否認の対象としていない。

 また、抵当権付債務を消滅させるため抵当物件である所有不動産を相当な価格で売却しその代金をもって債務の支払いにあてることは詐害行為にならないとする最高裁判例がある。(最判 昭和41.5.27)

 今後、不動産の相当価格による売却が詐害行為になるか否かについての判例の集積が待たれるところである。なお、来年の民法改正に向けた法制審議会民法部会要綱仮案の内容は、前記破産法第161条との平仄を意識し、同条と同一の内容となっている。

2.担保権の設定について

 大審院判例は、一部の債権者の為に抵当権を設定することは、他の債権者の共同担保を減少させる結果となりその債権者に優先弁済を得させることになるから詐害行為となるとする。(大判 明治40.9.21)

 一方で、最高裁の下記判例が存在する。
 @ 生計費及び子女の大学進学に必要な費用を借用するためその所有する家財・衣料等を譲渡担保に供することは原則詐害行為とならない。(最判 昭和42.11.9)
 A 取引先に担保権実行を通告された債務者が担保権実行を回避して営業を継続  するために、店舗を営業用動産や営業権とともに譲渡担保に供することは原則詐害行為とならない。(最判 昭和44.12.19)

 ところで、破産法第162条は、支払不能(債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう)になる前30日以内に行われた既存の債務についてなされた担保権の設定に限定して否認の対象としている。
 有力な学説は、担保権の設定が既存の債務に対するものか、新規の債務に対するものかで区別し、既存の債務に対するものは詐害行為となり、新規の債務に対するものは詐害行為とはならないとする。
 この考え方によると、債務者が再生のために新規に金銭を借り入れ担保権を設定することは詐害行為にならないことになる。

 なお、法制審議会民法部会要綱仮案の内容は、前記破産法第162条と同一の内容となっている。

3.弁済について

 最高裁判例は、債務の弁済は原則として詐害行為とならず特定の債権者に優先的に弁済しようと通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合にのみ詐害行為になるとする。(最判 昭和33.9.26)

 ところで、破産法第162条は、支払不能に陥る前の弁済を否認の対象としていない。
 有力な学説は、本来弁済は義務であることに加え破産法で規定する否認権の対象事例よりも債権者取消権による取消の対象事例が広く認められることは整合性の観点から問題があるとし、弁済期にある債務の弁済は詐害行為にあたらないとする。

 この考え方によると、債務者が再生の便宜のために有力な取引先等特定の債務者に債務の弁済をすることは詐害行為にならないことになる。
 破産法との平仄を意識すると、上記考え方が相当であると思料する。


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