2017年12月01日

月刊・企業経営サポート情報 bO86

◆家族信託を上手に活用しよう
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2017.12.01

司法書士・行政書士  星 野 文 仁


 今、家族信託(いわゆる「民事信託」のことです。以下、「家族信託」といいます)が各方面から熱い視線を浴びています。信託法が改正され新信託法が施行されたのは、2007年9月なのでもう10年も経過しますが、改正前の硬直化した信託法に比べ、新信託法は非常に自由度の高い設計をすることができるようになりました。
 たとえば、新信託法は家族信託を使うことによって成年後見制度や任意後見制度の補完機能として活用したり、世代間を超えた資産承継をするために遺言の代用として活用したりすることができます。これらのほかにも家族信託を使っていままでできなかったいろいろなことができるようになり、近年、家族信託が俄かに注目されるようになって来たのです。
 そこで、この原稿では遺言では実現できなかった世代間を超えた資産承継の家族信託(遺言代用信託兼受益者連続型信託)について、紹介したいと思います。

1.家族信託の具体的活用例

 夫の実家がもともと地主で先祖代々からの不動産を多数所有し、多くの収益不動産を所有しているような場合で、子供がいない夫婦の場合など、家族信託を有効に活用することによって世代間を超えた資産承継をすることができるようになりました。
 具体的な説明をさせて頂きます。事例としては、高齢者の夫と病弱な妻の二人暮らしで子供はなく、夫は代々の地主の長男で収益物件を多数所有しているとします。
 夫としては、自分の死後の遺産は全て病弱な妻のために残してやりたいが、先祖代々の土地はできれば血の繋がった自分の弟の長男である甥に継がせたいという状況です。今まで、不動産の管理は全て近くの不動産屋に任せていたのですが、賃貸者契約の当事者となって賃貸借契約書にハンコを押すのも面倒になってきました。そこで、信頼のできる弟の長男である甥にそういった面倒なことも一切任せたいと思っていました。
 そこで、委託者を夫、受託者を甥、そして、当初の受益者を夫として家族信託契約を締結することにしました。この家族信託契約によって、所有権は一見、受託者である甥に移転しますが、この所有権移転は、便宜上、外形的なもので真の所有者が委託者である夫であることに変わりはありません。
 しかし、信託契約が他の制度、たとえば成年後見制度と比べ優れている点は、受託者の権限が非常に広く、信託契約の内容を細かく定めることができ、その内容によっては当該不動産の管理、維持(修繕や大規模修繕)、賃貸借契約の締結や解除はもちろんのこと、その処分、つまり売却さえも行うことができる点にあります。
 しかも、これらの行為は委任者の同意なくして行うことができる(もちろん、信託契約の内容により、処分等を禁止することもできます)ので、委託者が高齢者であっても、当該信託契約締結時に意思能力がはっきりしていれば、たとえその後、委託者が認知症になってしまい意思無能力者となってしまったとしても、信託契約が有効に存続している間は、裁判所やその他の親族等の同意なくして、受託者の判断で当該不動産を第三者に売却することが可能となります。
 これは、どういうことかと申し上げますと、信託とは、委任者の財産を維持管理及び増加をすることが目的ですから、受任者が委任者にとって最も有利だと判断すれば不動産を現金に換えて、不動産以外の物に投資することもできるし、場合によっては他の不動産に買い替えることもできるという意味です。さきほど、成年後見制度や任意後見制度の補完機能として活用できると申し上げたのはこのためです。
 そして、予め信託契約によって夫亡きあとの受益者を、夫の配偶者である妻にしておけば、夫は安心して収益物件を信託契約によって委託者に託すことができます。
 もちろん、収益物件の管理、維持、賃貸借契約の締結や解除といった面倒なことは全て受託者である甥が当事者としてくれるのです。そして、妻は収益物件から生じる賃料を受益者として受け取ることができます。万一、受益者である妻が認知症となって成年被後見人となってしまっても変わることはありません。

2.家族信託だからこそできる世代間を越えた資産承継

 しかし、ここまでのことは、財産管理契約、遺言及び成年後見制度を組み合わせることでもある程度、同じようなことができるかもかもしれません。
 しかし、家族信託のその他の点で他の制度と比べて優れているのは、遺言では実現できなかった世代間を超えた資産承継(遺言代用信託兼受益者連続型信託)ができるようになったということです。
 この点を、詳しく説明します。子供がいない夫婦の場合には、原則として遺言を残すべきです。そうでないと夫の兄弟姉妹にも相続権が発生して、あとあと問題になる可能性があります。これはこれで間違ってはいません。
 しかし、この場合には、夫に相続が発生すると全遺産が妻のものになってしまいます。通常の夫婦であれば夫の全遺産が妻のものになることに、異存のある方はあまりいないでしょう。しかし、妻もいずれは、死にます。このときの妻の相続人は、だれになるのでしょうか?そうです。全て、妻の兄弟姉妹または妻の甥もしくは姪が相続人となります。つまり一旦妻のものになってしまった夫の全遺産は、夫とは血縁関係のない妻の血縁関係者のものになってしまうのです。

3.遺言か家族信託か?遺す想いにあわせた備えの大切さ

 家族信託がない時代には、これはどうしようもないことでした。だから、もしかすると子供がいない夫婦の場合であっても、遺言書をあまり残さなかったのかもしれません。
 しかし、本例のように先祖代々の土地を相続した場合には、やはり感情として自分の血縁関係者、たとえば甥や姪に土地を残したいと思うのが、通常の感情ではないでしょうか?
 家族信託の出現により、この悩みが解消されました。つまり、妻が死亡し後の受益者を、自分の甥や姪に指定することが可能となったのです。したがって、妻が生きている間は、妻に自分の全財産(受益権)を相続させ妻の死後は夫の遺産を自分の血縁者に戻す、つまり世代間を超えた資産承継をすることが可能となったのです。




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posted by 支援チーム at 00:00| Comment(0) | ◆司法書士からの情報…企業再編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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