2015年11月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO67

▲新規事業の立ち上げと事業譲渡
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2015.11.01


1.新規事業の立ち上げ

 近年、弱電系を中心に、新規事業の立ち上げに伴う、知的財産の相談が増えてきている。ご存知のように、家電業界やエレクトロニクス業界の不況の煽りで、“生き残りをかけた”本業以外への進出が進んでいる。
 当然、新規事業となると本業とは異なる事業領域であるため、十分な情報がなく、事業戦略があいまいなまま進んでしまうケースが多い。

2.新規事業の知財サポート

 このような企業に対して、知的財産のサポートを行う場合には、知的財産情報から簡単に判ることを積み上げて整理することが多い。
 すなわち、新規事業分野で特許調査を行うことで、(1)誰が権利者(プレーヤー)で、(2)どのような権利を保有しているか、(3)さらに最近の出願件数は、などは、簡単に判る。
 このような特許調査の結果(特許から判る開発状況)と、企業側が集めた既存製品の情報(市場における実製品の情報)とを照らし合わせていくことで、ターゲットとすべき市場や開発すべき対象が絞られてくる。
 また、このようなプロセスを踏むことで、予め抵触する特許を回避することや、既存技術の重複開発を回避することができ、自社の開発した成果の権利化も期待できる。これは知財リスク・開発リスクの大いなるヘッジである。

3.事業譲渡

 新規事業の立ち上げが順調にいっても、立ち上げた新規事業を譲渡するケースも近年散見される。
 余談になるが、新規事業の立ち上げがうまくいかなかったり、うまくいってもその事業自体を譲渡せざるを得ないのは、もともと本業が不振になった後に、新規事業の立ち上げを開始していることの影響が大きいように感じられる。すなわち、本業との関係で、資金的・人材的・時間的に新規事業の立ち上げに専念できず、いずれにしても新規事業が長続きしないようである。
 その意味では、知財を使って資金面も含めた事業安定性が確保できることが望ましいが現状では、そこまでは難しいようである。
 一方で、立ち上げた新規事業を手放す場合、事業自体の評価(収益性)が主となるが、知財回りをしっかりしておこくことで事業譲渡の成功につながったケースに、ここ数カ月で2件ほど関わることになった。

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4.サポイン事業に関する事業譲渡〜具体的事例1〜

(1)事業譲渡の背景
 経済産業省系の補助金事業である、サポイン(戦略的基盤技術高度化支援)事業で、電子部品の開発を行った成果および事業体制を含めた事業譲渡について紹介する。
 開発の成果は、国内外の特許権、意匠権および商標権と、生産技術に関するノウハウである。また、事業体制については、@企画・設計を行うPL企業 A材料供給・一次加工企業、B二次加工企業、C特性評価企業+外部支援(管理事業体・公設試験場大学・特許事務所)であり、外部支援の部分を除くコンソーシアム部分を事業譲渡の対象としている。
 サポイン事業で、電子部品の開発を行い、開発目的の特性を有する製品自体は完成したが、具体的受注が得られなかった。すわなち、展示会出品等を通して引き合いは来るが、受注に繋がらない、プロダクトアウト型の典型例である。

(2)なぜ事業譲渡できたか?
 なぜ、このような事業でも事業譲渡できたかは、次の(i)〜(D)の要因が“特に知財的な観点で”大きいと言える。
 (@)開発段階でのクリアンス調査
  ⇒開発段階で、その物の製造・販売が他人の権利侵害となるかと調査する実施可否調査を行い、権利侵   害が無いことを確認していた。正確には、権利侵害の可能性があり、設計変更を行い、変更後の製品   について非侵害の鑑定書を準備していた。
 (A)ポートフォリオ形成
  ⇒設計変更を行った製品について、その設計変更事項自体を特徴とする特許出願・意匠出願を網羅的に   行い権利化していた。また、特許権・意匠権と組み合うノウハウを明確にしていた。
 (B)PL企業集中の権利化
  ⇒開発成果について、プロジェクトリーダーである(PL)企業に意図的に集中させていた。
 (C)生産体制としてのアライアンス
  ⇒生産体制のアライアンスが利益配分も含めた契約書上も担保されており、アライアンス自体の譲渡が   できる形となっていた。
 (D)知財評価 
  ⇒数十万でできる簡易的な価格算定を利用し、参考価格を取得することで譲渡対価のベースを形成する
   ことができた。

(3)最後に
 上記(i)〜(D)は、我々知財の専門家を介した、自社のビジネスモデル(収益モデル)形成であり、これを安定的に維持するためのツールに等しい。すなわち、事業譲渡できる形態を意識するのではなく、自社のビジネスモデル(収益モデル)形成を意識することで、結果として事業譲渡ができたに過ぎない。

5.六次化事業の事業譲渡〜具体的事例2〜

(1)事業譲渡の背景
 電子部品の組み立て会社が六次化事業を立ち上げ、FC(フランチャイズ)企業も含めて、この六次化事業を事業譲渡した事例について紹介する。
 この六次化事業は、機能性食品の量産化として注目され、出口側である販路についても確保され、価格維持が可能な安定したモデルとなった。そして、その安定した収益性ゆえに、上場企業を含めた5〜6社のFCによる生産体制が構築された。
 六次化事業に成功した電子部品の組み立て会社は、@ノウハウを含む技術指導利益、AFC先への機器供給・消耗品供給による利益、B生産物の全数買い上げによる卸利益を生み出す収益モデルを形成することができた。
 一方で、電子部品の不振で赤字が雪だるま式に増え、要注意先として金融機関のニューマネーが入らない状況が生じ、事業資金が不足する事態となった。
 さらに、六次化事業は、社会的には注目されるものの、新規事業の立ち上げ段階で利益は小さく、これまでの開発費を回収するには到底及ばないものであった。
 すなわち、本業が不調となってからの新規事業の立ち上げの典型であるが、運転資金が続かず、せっかく立ち上げた新規事業も含めて、会社自体の経営が非常に不安定な状況となっていった。

(2)なぜ事業譲渡できたか?
 なぜ、このような事業でも事業譲渡できたかは、次の(i)〜(D)の要因が“特に知財的な観点で”大きいと言える。
 (@)FCを含む生産体制としてのアライアンス
   形式的は、不振の電子部品と切り離して事業譲渡が可能なパッケージとなっていたこと、さらにFC  を含めて収益性が数字として読める状態となっていたことが表面的な要因と見えるが、これらを担保す  るように、FC契約書など各種契約書が、契約上互いに権利義務が明確化されていた。
 (A)ノウハウ管理
   実は、上場企業がFC傘下に入ったのは、このノウハウおよびノウハウ管理にあったと言っても過言  ではない。単なる業務提携ではなく、上場企業といえども技術指導がないと生産および生産管理ができ  ないためである。
   そして、このノウハウがマニュアル化され、何がノウハウ(財産)が明確な形で管理されていたこと  が、次の知財評価(事業譲渡対価の評価)でも評価された。
 (B)事業性評価
   ノウハウを含む本格的な事業性評価として、予め参考価格を取得することで譲渡対価のベースを形成  することができた。
   その中では、@市場性、A特許・商標(ブランド)、Bノウハウ、CFCを含む事業性、Cこれらか  ら想定される収益性が本格的に事業性評価がされた。
 (C)権利の集中
   開発段階では、協力会社が外部コンサルも関わってもいたが、意図的に権利を自社に集中させていた。

(3)最後に
 上記(i)〜(C)は、前述の第1事例同様、我々知財の専門家を介した、自社のビジネスモデル(収益モデル)形成であり、これを安定的に維持するためのツールに等しい。すなわち、事業譲渡できる形態を意識するのではなく、自社のビジネスモデル(収益モデル)形成を意識することで、結果として事業譲渡ができたに過ぎない。
 それと同時に、知財回りをしっかりしておこくことで、少なくとも、途中で事業が売却できるところまでは行けることも判る。






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posted by 支援チーム at 10:00| Comment(0) | ◆弁理士からの情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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