2014年11月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO56

★再生と詐害行為取消権について
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2014.11.01



 債務超過の状況にある債務者が、再生のために不動産を売却したり、担保権設定をしたり、あるいは一部債権者に債務を弁済したりすることがある。
 一方で、民法第424条は、「債権者は、債務者が債権を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。」と規定し、債務者が財産を減少させる行為をしたときこれを取り消す権利(詐害行為取消権)を認めている。
 再生をしたい債務者の利益と債務者の責任財産(強制執行の引当てになる債務者の財産)を保全したい債権者の利益の衝突をどのように調整したらいいのだろうか。

1.不動産の売却について

 大審院判例は、不動産の売却は、価格が相当であっても詐害行為となるとする。(大判 明治39.2.5)
 これを支持する学説は、不動産が現金に代わってしまうと債務者に勝手に使われてしまう可能性が高まるから詐害行為として取消しを認めるべきと主張する。
 これに反対する学説は、財政危機に陥った債務者が再生のために不動産を売却し売却代金を資金繰りに使用する途をふさぐことは経営再建の努力を阻害することになるので、相当価格での売却は詐害行為とならないと主張する。

 ところで、破産法第161条は、相当価格による財産処分を否認する要件として「破産者において、隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分をするおそれを現に生じさせるものであること」を要するとし、原則相当価格による財産処分を否認の対象としていない。

 また、抵当権付債務を消滅させるため抵当物件である所有不動産を相当な価格で売却しその代金をもって債務の支払いにあてることは詐害行為にならないとする最高裁判例がある。(最判 昭和41.5.27)

 今後、不動産の相当価格による売却が詐害行為になるか否かについての判例の集積が待たれるところである。なお、来年の民法改正に向けた法制審議会民法部会要綱仮案の内容は、前記破産法第161条との平仄を意識し、同条と同一の内容となっている。

2.担保権の設定について

 大審院判例は、一部の債権者の為に抵当権を設定することは、他の債権者の共同担保を減少させる結果となりその債権者に優先弁済を得させることになるから詐害行為となるとする。(大判 明治40.9.21)

 一方で、最高裁の下記判例が存在する。
 @ 生計費及び子女の大学進学に必要な費用を借用するためその所有する家財・衣料等を譲渡担保に供することは原則詐害行為とならない。(最判 昭和42.11.9)
 A 取引先に担保権実行を通告された債務者が担保権実行を回避して営業を継続  するために、店舗を営業用動産や営業権とともに譲渡担保に供することは原則詐害行為とならない。(最判 昭和44.12.19)

 ところで、破産法第162条は、支払不能(債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう)になる前30日以内に行われた既存の債務についてなされた担保権の設定に限定して否認の対象としている。
 有力な学説は、担保権の設定が既存の債務に対するものか、新規の債務に対するものかで区別し、既存の債務に対するものは詐害行為となり、新規の債務に対するものは詐害行為とはならないとする。
 この考え方によると、債務者が再生のために新規に金銭を借り入れ担保権を設定することは詐害行為にならないことになる。

 なお、法制審議会民法部会要綱仮案の内容は、前記破産法第162条と同一の内容となっている。

3.弁済について

 最高裁判例は、債務の弁済は原則として詐害行為とならず特定の債権者に優先的に弁済しようと通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合にのみ詐害行為になるとする。(最判 昭和33.9.26)

 ところで、破産法第162条は、支払不能に陥る前の弁済を否認の対象としていない。
 有力な学説は、本来弁済は義務であることに加え破産法で規定する否認権の対象事例よりも債権者取消権による取消の対象事例が広く認められることは整合性の観点から問題があるとし、弁済期にある債務の弁済は詐害行為にあたらないとする。

 この考え方によると、債務者が再生の便宜のために有力な取引先等特定の債務者に債務の弁済をすることは詐害行為にならないことになる。
 破産法との平仄を意識すると、上記考え方が相当であると思料する。


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