2013年10月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO43

◆消費税増税における価格転嫁対策としての知的財産

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2013.10.01

弁理士  酒 井 俊 之

 消費税率の引き上げに伴う価格転嫁対策として、知的財産のセミナーの依頼が立て続けにきていることから、今回はそのようなセミナーの概要について紹介する。

《なぜ弁理士に消費税増税のセミナー依頼》

 当然、消費税の増税の講演は、税理士がトップバッターである。まずは、消費税制度の仕組み自体や増税の変更点の解説、さらには、経過措置や特別措置についての理解が第1である。
 では、説明を受けた事業者は、具体的にどのような対策が必要となるか。すなわち、事業者は、理解が深まれば深まるほど、消費税率の引上げにより、売上が変わらなくても、納税額や仕入れる商品の税込み価格が上がるため、余裕資金(利益)が減少することを認識する。そして、このような余裕資金(利益)の減少に対する価格転嫁対策が次の講演になる。

 価格転嫁対策は、(1)売上の向上、(2)経費の節減、(3)経営体質の強化が柱になる(全国商工会連合会『消費税増税対応テキスト』)。
 
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 ここで、(2)経費の節減については、事業者は何らかのコストダウン対策は既に行っており、(3)経営体質の強化については、新分野の進出などはリスクを伴い早々に着手できるものではないことから、(1)売上の向上にスポットライトが当ることになる。
 そして、商品・サービスでの差別化は、まさしく自社の知的財産の見直しであり、弁理士が得意中の得意とするところである。

《商品・サービスでの差別化と知的財産》

 そもそも知的財産とは、他社と差別化できる自社の特徴部分であり、特に、有形資産以外の無体財産を意味する。
 差別化できる要素は、ものづくり企業であれば技術であり、商品のプロデュースを得意とする会社は商品デザインである。これらは、特許や意匠の対象であり、権利化をすれば(手続をすれば)、特許権や意匠権という権利を取得することができるが、権利化しなくても、自社の知的財産(無形資産)であることには変わりはない。
 同じように、差別化できる要素としては、商品名やサービス名のほかこれらのロゴ、会社名やそのハウスマーク・屋号がある。これらも商標の対象であり、権利化すれば(手続をすれば)、商標権という権利を取得することができるが、権利化しなくても、自社の知的財産(ブランド)であることに変わりはない。

《まずは、自社の知的財産を認識して経営に生かす》

 その意味では、社内には、経営者も従業員も気づいていない知的財産が多数あるということになる。このような知的財産は、有形資産のようにバランスシートなどにはほとんど表れないために認識されないが、実際の事業では、その会社の商品が売れたり、事業が継続できている核心的なものであったりする。
 そのため、他社と差別化できるところ、すなわち、自社の知的財産を見直すことがスタートとなり、知的財産として見出された競争資源をどのように経営に生かすかがポイントとなる。

《事例形式で演習》

 そして、知的財産を競争資源として経営に生かす点については、以下のような仮想事例を使って演習を行っている。具体的には、仮想事例から経営課題を抽出し、その経営課題を知的財産の視点を使ってどのように解決できるか検討してもらい、その後ディスカッション等を行う。

事例

1 『あおばフード』は30年続く,ハンバーグ、ウインナーなどの冷凍食品製造メーカー。取引先は,地元の大手スーパーが売上の90パーセントを占める。残りは,地元旅館,個人商店など。

2 ウインナーにニラなどの香味野菜を練りこんだ「あおばウインナー」がヒット商品となるが、他社でも同様の商品が発売されるようになり「あおばウインナー」は市場から消えた。その後は,大手スーパー向けの低価格の冷凍商品が主流となる。

3 その後、大口取引先の大手スーパーより「ライバルディスカウントショップとの価格競争に勝つため,納品額を低くして欲しい」との要請を受けた。そのため、人件費を下げ、仕入れ先をさらに安いところを探すなどコストカットに力を入れたが、結果的には、社員のやる気が低下して、新商品の開発意識の低下と共に営業部隊の士気意識も低下してしまった。

 ここで、ディスカッションの一例を示す。例えば、1.のパラグラフについては、『経営課題として、大手スーパー依存度が高い。そこで、もう1つの柱が欲しい。』

 続けて、知的財産の視点での解決策として、『そもそも差別化できるところが知財なので、差別化できない大手スーパーではなく、差別化できる市場での商品開発を行うべき。』、さらに、『(差別化できる市場としては)例えば、病院食・給食であり、この場合のターゲットは、患者か児童か?』『いや、ターゲットは、患者でも児童でもなく、その商品が採用されるかは、栄養士がキーマンであり、ターゲットは栄養士だろう。』

 そして、『ターゲットが栄養士と明確になれば、開発すべき商品は、栄養士が使い易いように、カロリーや栄養成分を100g単位の小分けにする・・』『このように、ターゲットを明確にして商品開発を加速させることが重要だ(商品開発と知財の一体化)』といったディスカッションが行われる。

 この仮想事例は、薄利多売のボリュームゾーンでしか勝負できずに、もがいている事業者の典型例である。価格以外で勝負ができないコモディティ化(一般化)した商品だけでは、結局、規模の論理で、中小企業は淘汰されていってしまう。

 消費税増税に伴い、このようなケースは確実に増えるが、知的財産に関わる人間として、このような事例を知的財産の視点で何とかしたいと思う。種々の立場で検討していただけると幸いである。


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posted by 支援チーム at 14:10| Comment(0) | ◆弁理士からの情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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