★成年後見と議決権行使
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2013.05.01
司法書士・行政書士 星野文仁
◆成年後見人に、被成年後見人の持っている株式の議決権行使の権利があるか?
つい最近私が扱った事例である。
あるグループ企業の再建のサポートをしていた。
このグループ企業は、中核企業が食品の卸を行っていて、その他関係会社が4社地域別にあり、その他不動産賃貸業を営む会社が1社あった。これらグループ会社6社のうち、黒字会社は、不動産会社1社だけで地方にある子会社2社は収支がトントン残りの3社は、中核企業を含めて大幅な赤字であった。
この黒字会社は、大幅な黒字のため法人税を多く支払い、他のグループ会社は、赤字で法人税納税していない状況であり、タックス・プランニングにも問題があった。
しかもグループ会社にもある程度、資産があったが、基本的には、オーナーの資産(主に不動産)を、担保に金融機関から借り入れを行い各社の運転資金に充てている有様であった。
本業(食品卸)もあまり思わしくなく、実質債務超過に陥りそうだったため、食品の卸業を他社に売却し、不動産賃貸業のみの会社となって生き残りを目指していた。
そのためグループ企業をまず合併し、各企業の損益を平準化したあと、食品卸事業だけ会社分割で、他社に譲渡するスキームが出来上がり、各金融機関との話会いも済んで、M&Aの仲介会社とアドバイザリー契約の直前まで、話しが進んでいた。
そして、そのアドバイザリー契約を、締結しようとした日の朝、その社長が脳溢血で倒れてしまった。
一命は取り留めたもののほぼ植物状態となってしまって、意思表示をすることができなくなった。
先程も述べたとおり、このグループ企業は、今後会社の再建をするために、合併や会社分割等の企業再編をしていかなければならないが、グループ企業の株式の過半数をオーナーが握っているためオーナー抜きでは、株主総会の特別決議をすることができない。
そこで、オーナーに成年後見人を、附すため成年後見の申立てを行った。当然、成年後見人が附されれば、後見人が被後見人に代わって議決権を行使できるものと解釈していたが、裁判所の見解は統一ではないことが判った。すなわち、議決権行使は、被後見人の財産の保全に資するものではないため成年後見人の職務の権限外であるとの見解があり、はっきりした見解はないとのことである。
いろいろな裁判所に尋ねても結論は出ず、個別の対応ということになっているが、会社法で株主の議決権について手当している条文はない。
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