2012年07月11日

月刊・企業再生サポート情報 bO28

◆企業再生前に倒産してしまった事例
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2012.07.11
 
特定社会保険労務士  川 端  重 夫


1.企業の概況

 
 A社は電子計算機のソフトウエアーの企画・開発・販売を業とする会社で、従業員数は20人。
 資本金は1億2千万円。直前の売上額は年間2億5千万円。だが経費負担が重く、収支はゼロ。
 A社には社長以下6人の役員がいる。役付きは社長・副社長・専務と後は平取締役となっているが、実質的には超ワンマン社長で、役員といっても名前だけで、何の権限もなかった。


2.倒産前の会社の状況

 ソフトウエアーの企画・開発の会社として色々の試行錯誤はしていたが、ある時点から全く売り上げがなくなり、資金繰りに苦慮していた。社長は取引先や金融機関に約2億円の融資を申し込んでいたが、応じて貰えたのは1社で金額も3千万円のみであり、焼け石に水という感じでした。そんな中で、営業強化としてこの業界に経験があるという男性社員1名を雇用し、営業に力を入れようとしました。その社員が1ヵ月勤務し、給料日になり給料を貰いにいったところ、社長より給料は今日は払えない。少しまってくれと言われ、激怒したところから会社の状況が明るみになりました。


3. 倒産へのみちのり

 激怒した新入社員が労働基準監督署に訴えるという事態になり、労務担当者から社会保険労務士である私に相談がありました。話によると、給料の遅配はすでに3ヵ月前から始まっており、家賃や社会保険料も滞納しているという。この事態に対して社長にどうするのか問い質したところ、今の研究開発が完成すれば金が入ってくる。暫く時間が欲しいということになり、この時点では社長の話を信ずることになった。  
  しかし、事態は急変しました。社長の話は全く根拠のない話であり、日常の資金繰りもままならなくなり、経理担当者がカードローンで個人的に借り入れて対応していることが解りました。この会社には、税理士が顧問としていましたが、この時点まで全く機能していませんでした。


4.従業員を守るために立ち上がりました

 私は単独で社長に面会を求めました。今後の社長の対応を確認しました。しかし、以前と全く同じ話の繰り返しで、進展はみられませんでした。私は、役員全員に集まってもらい、この事態の改善について一人一人に確認しましたが、だれ一人からも改善策は出てきませんでした。私は、会社解散を提案しましたが、社長は同意しません。私は他の役員にも同意を求めましたが無言でした。
 そこで次のような提案をしました。今月末で(あと1週間後)で全社員を解雇する。今日そのことを全社員に発表するようにと。しかし、社長はなかなか同意しませんでしたが、自分からは言えないが、私から全社員に解雇通告をしてくれということになりました。


5.全社員に解雇通告

 今月末をもって全社員を解雇する。但し、給料も支払われない状況なので、解雇予告手当は支払われない。しかし、失業保険は出来るだけ早く手続きをする。今まで遅配されていた給料も『未払賃金立替払制度』を活用して、全額ではないが受け取れるようにすると発表し、これから個別相談に応じます。何なりと申し出て下さいと話しました。私は、社員から抗議されると恐れていましたが、全く逆で、全社員ホッとした様子でした。結果的には、失業保険も最短時間で受けられ、社長以外役員を含めて全従業員が『未払賃金立替払制度』から一定額を受け取ることができました。


6.未払賃金立替払制度とは

 この制度を利用できるのは、労災保険に加入している事業所に雇用されている従業員です。対象となる従業員は破産又は倒産した日の6ヵ月前の日から2年の間に当該会社を退職した従業員です。
 立替払の対象となる未払い賃金は、支払期日が到来している定期賃金(月給)と退職手当で未払いとなっているものです。所得税や社会保険料等の控除する前の金額です。立替払の額は未払賃金総額の80%。立替払いには、年齢別に上限額が決められています。具体的には、45歳以上は 296万円、30歳以上45歳未満は 176万円、30歳未満は88万円。


7.倒産が避けられなかった原因は?

 超ワンマン社長の詐欺的言動に社員全員がだまされた。社長について行けば何とかなると思い、無駄な時間を費やしたこと。今辞めれば給料は貰えないと思っていたこと。顧問税理士さんが会社に何の指導もしなかったこと。役員も社長の言葉に騙されていて、何の対応もしていなかったこと。
 遅配ではあったが給与額が比較的高く、社員の年齢が高齢だったこと。何も問題がないように見える会社も、問題があるということを肝に銘じ
て、会社訪問は月1回は必要ではないかと反省しきりです。

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◆Kigyo-saisei◆Corporate recovery team◆Kigyo-saisei◆
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posted by 支援チーム at 17:19| Comment(0) | ◆社会保険労務士からの情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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