2012年06月22日

月刊・企業再生サポート情報 bO27

▲知財が果たすべき役割と時代の変化
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2012.06.22
 
弁理士  酒 井 俊 之



1.そもそも知的財産の制度は

 『知的財産』と聞いて、思い浮かべるのは、特許や商標であって、背景として、技術やブランドを独占して一儲けしようと負のイメージが付きまとうかもしれません。

 独占排他を基調とする知的財産に関する国際的な枠組みは、1873年のウィーン特許会議により確立されました。

 それ以前は、反特許運動が長い間続いていました。理由は、技術を特許で独占して一儲けするよりも、よい発明をしたら報償を与えてこれを開放すべきとの考えでした。

 しかし、最終的に、ウィーン特許会議で独占排他権を与えるという制度設計を採用したのは、発明をした者に商品化・製品化を行わせ、産業の発達を推し進めようとしたためでした。

 すなわち、よい発明をしたら報償を与えてこれを開放するよりも、よい発明をしてもそれだけでは一銭にもならない独占排他権を与えることで、発明をした者は、独占排他権(自分だけが製造・販売等を行える)を背景に、商品化・製品化を行い、それを製造し、販売するといった経済活動を行うことを期待したわけです。

 ですので、知的財産の制度の根底にあるのは、知的財産を基に経済活動を行わしめることであり、実は、通常、特許をとっただけでは一銭にもならず、むしろ、弁理士や特許事務所に結構な額を払うだけになってしまいます。


2.時代の変化

 独占排他を基調とする知的財産の制度は、1873年以降、全世界で採用され、自社の製品や商品を守る意味で、一定の成果を出してきまし
た。

 しかし、現代において、知的財産がどれだけ企業活動に貢献しているかは、未知数です。特に、自社の製品や商品を守ると言う意味では、知的財産自体が障害となる場合もしばしばです。

 というのも、1873年の制度設計の段階では、1つの特許で1つの製品を守ることを念頭にしていました。しかし、140年の時代の変化で、1つの製品には、多数の特許が存在するようになりました。エレクトロニクスの分野では、1製品当たり1万を超える特許も存在します。

 ここからも判るように、制度自体は140年前に設計されたままですが、市場における製品は、140年前には想像も尽かないほど変化してしまったわけです。その意味で、知的財産がどれだけ企業活動に貢献しているかは、未知数というわけです。


3.新しい知財の果たすべき役割

 一方で、未知数ゆえに何も知的財産に関する取り組みをしない企業は、確実に衰退するでしょう。企業が経済活動を行えば、それに伴って何らかの知的創造を行っているわけで、それを暗黙知から形式知したのが知的財産です。

 すなわち、特許出願を行うことが知的財産の取り組みではなく、自社の強み弱みを、技術面やブランド面から客観的に分析して、これを経営に生かすことがポイントなります。逆に、経営に生かせるからこそ、特許も取得するという話になります。

 例えば、私のクライアントで不動産投資会社があります。もちろん、不動産投資会社は営業中心の会社であり、営業部隊が最前線であり、営業部隊の士気意識こそが、会社の売り上げに直結します。

 この会社では、社長が考えた特許を、“営業部隊の士気意識向上のために、”取得しています。海外での権利化も進めています。(特許の内容も画期的ですが)特許の内容以上に、社長が特許を取ることや海外での権利化を行うことで、営業部隊に、自社は他の不動産投資会社とは違うということを認識させ、会社への帰属意識や忠誠心を高めています。実際、特許査定が出たときには、社長以下社員全員がこぶしを振り上げて喜んだと聞いています。

 この他にも、取引先や販路開拓に、自社の知的財産に関する情報を活用した例などは多数あります。また、自社の事業展開に際して、技術動向や製品動向を分析して、自社製品が競争優位性を獲得できる分野を抽出したりすることもあります。



 このように、知的財産は、自社の経済活動を反映したバロメータであり、これを使って企業に活力を与えることができる意味では、エネルギー源でもあります。

 是非、この機会に自社の知的財産を見直してみてはいかがでしょうか。

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posted by 支援チーム at 17:45| Comment(0) | ◆弁理士からの情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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