2011年09月16日

月刊・企業再生サポート情報 bO18

▲事業譲渡における労働者の地位について

企業再生サポート情報-018.JPG
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2011.09.19

弁護士  安 達 一 彦
 


 最近、債務超過会社が再生の手段として、第二会社を設立し第二会社に対して事業譲渡をする事例が散見されますが、労働者の地位をめぐりどのような場合にトラブルになるのでしょうか。


1.事業譲渡における労働契約不承継の原則


 事業譲渡は、事業を構成する資産や負債を個別に移転させる契約行為であり、合併は事業を構成する資産や負債を包括的に会社分割は資産や負債の全部又は一部を一般承継させる組織法上の行為です。

 事業譲渡は、契約行為ですので譲受会社にどの事業を承継させるか、どの債務を承継させるかは当事者間の合意により自由に選択することができます。譲受会社が労働契約の承継を義務づけられない原則を、労働契約不承継の原則といいます。



2.事業譲渡後の労働者の地位


 事業譲渡後、譲受会社に労働契約承継の対象とならなかった労働者は、譲渡会社から事業継続が困難であることを理由に整理解雇の対象となるのが通常です。


 不幸にして整理解雇の対象となった従業員は整理解雇は「整理解雇の四要件」に該当せず解雇権の濫用として争いあるいは第二会社に対し雇用の責任を求めることになります。



3.第二会社に対し雇用責任を認めた裁判例


(1)譲渡会社が第二会社に事業譲渡後、従業員をいったん解雇し大半の従業員を採用しながら組合活動に熱心な従業員を採用しなかったので、当該従業員が第二会社に対し雇用関係の確認を求めた事例(大阪地裁 平6.8.5判決)


 この事例では、裁判所は「労働契約の承継に合理的な期待があり、両者には高度の実質的同一性が認められ、法人格の別異性、事業廃止の自由、新規契約締結の自由を全面的に主張して雇用関係を否定することは、労働契約の関係においては、実質的には解雇権法理の適用を回避するための法人格の濫用である。 」として第二会社への雇用を認容しています。


(2)譲渡会社が企業廃止・解散をしたうえ従業員を全員解雇し、第二会社に対し事業譲渡したところ第二会社が従業員を雇用しなかったので雇用関係の確認を求めた事例(奈良地裁 平11.1.11判決)


 この事例では、裁判所は「企業廃止・解散に基づく全員解雇は廃止を仮装したもので解雇は無効であり、譲渡人の事業はこれと実質的一体性を有する譲受会社に承継され、労働契約は譲受会社に承継された。」として第二会社への雇用を認容しています。



結語。


 事業譲渡は契約行為ですので、第二会社には譲渡会社との合意により労働契約を承継しない自由があります。


 しかしながら3項(1)の事例の如き第二会社設立に法人格否認の法理が適用される場合及び3項(2)の事例の如き譲渡会社の偽装解散の場合では例外的に第二会社に対し雇用責任が認められることになります。


【PDF】で印刷できます。




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