2016年04月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO71

◆濫用的会社分割と詐害行為取消権について
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2016.4.01


 第二会社方式の新設分割において、優良資産や優良事業のみ新設会社に承継させ、特定の債権者を不当に害する目的で当該債務を承継しない会社分割がなされる場合があります。
かような濫用的会社分割がなされた場合、不利益を被った債権者はどのように救済されるのでしょうか。

1.詐害行為取消権の行使を認容するか

 民法第424条は、下記のとおり詐害行為取消権について規定しております。

【民法第424条】
 1.債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
 2.前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

 濫用的会社分割がなされた場合でも、詐害行為取消を認容するべきではないと考える立場の根拠は、@会社分割は会社の組織に関する行為であり財産権を目的としない法律行為であるところ、民法第424条2項は、財産権を目的としない法律行為は詐害行為取消権の対象とならないと規定していること、A会社分割は、株主、従業員、取引先等多くの者の利害に関わる組織行為であり、法的安定が尊重されるべきであることにあります。
 最判平24.10.12判決は、「株式会社を設立する新設分割がなされた場合において、新設会社にその債権に係る債務が承継されず、新設分割について異議を述べることもできない分割会社の債権者は、詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる。」と判示しました。(ちなみに、本判決はいわゆる濫用的会社分割に関する初めての最高裁判決です。)

2.分割会社が新設会社から何らかの対価を取得した場合、
   詐害行為取消を認容するか

 分割会社が新設会社に対し優良資産等を譲渡した際に、新設会社から@何らの対価を取得しなかった場合A対価として新設会社の株式を取得した場合B対価として現金を取得した場合等が考えられます。
 分割会社が何らの対価を取得しなかった場合は、詐害行為取消を認容すべきと思料します。
 それでは、分割会社が新設会社から対価として新設会社の株式を取得した場合はどのように考えたら良いでしょうか。

 東京高判平22.10.27判決は、「新設分割の対価である新設会社株式は、債権者にとって換価などに著しい困難を伴うから、分割会社の一般財産の価値が毀損され、本件の新設分割に詐害性が認められ、また、債権者が分割によって承継した資産を特定して返還させることは著しく困難である。」として詐害行為取消権の行使を認容しました。
 確かに、新設会社の株式は、換価の困難性があるうえ、分割会社において第三者に対し無償譲渡をなす等債権者を害する処分がなされ易いものであり、詐害行為取消権の行使を認容することは妥当と思料します。
 次に、対価として分割会社が現金を取得した場合は如何でしょうか。
新設会社から譲渡された資産等につき適正な鑑定評価がなされたうえ評価額相当の現金の交付があった場合詐害行為取消権の行使を認容するか否か、判例の集積が待たれるところです。

3.詐害行為取消の効果は、絶対的なものか相対的なものか

 詐害を理由とする新設分割取消の効果について、詐害行為取消を主張した債権者の債権保全に必要な範囲でのみ相対的な取り消しを認めるのが一般的です。詐害行為取消の効果を絶対的なものとすると、債権者のみならず株主、従業員等会社分割に関わるすべての当事者に悪影響を及ぼす(例えば、分割会社の従業員と新設会社との間の雇用契約が無効となる)ので、詐害行為を主張する債権者に対してのみ詐害行為取消の効果を認める相対的取消が相当と思料します。
 なお、相対的取消の効果として、譲渡された不動産等資産の返還を認容するか、譲渡対象資産を適正に評価のうえ評価額相当の価格賠償を認容するか、今後の判例の集積が待たれるところです。

4.会社法第764条の新設について

 前記最判平24.10.12判決が出現して間もなく平成26年会社法改正により下記のとおり会社法第764条が新設され、濫用的会社分割がなされた場合、新設会社等に債務が承継されない債権者による新設会社に対する履行請求制度が設けられました。

【会社法第764条】
 1.新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する。
 2.前項の規定にかかわらず、第810条第1項第二号(第813条第2項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定により異議を述べることができる新設分割会社の債権者(第810条第2項(第三号を除き、第813条第2項において準用する場合を含む。以下この項及び次項において同じ。)の各別の催告をしなければならないものに限る。次項において同じ。)が第810条第2項の各別の催告を受けなかった場合には、当該債権者は、新設分割計画において新設分割後に新設分割会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、新設分割会社に対して、新設分割会社が新設分割設立株式会社の成立の日に有していた財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。



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posted by 支援チーム at 10:00| Comment(0) | ◆法律家からの情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする