2016年11月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO79

▲債権回収会社(サービサー)を利用した企業再生
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2016.12.01


1.サービサーと企業再生

 サービサーといえば,支払の履行を遅滞したり,倒産の局面で登場する債権回収のプレーヤーのイメージが強いのではないでしょうか。確かにサービサーの事業内容の主たる事業は債権回収であることには変わりはない。

 しかし,昨今のサービサーの事業は様変わりしている。特に企業再生に力を入れているサービサーは多い。ただ,金融機関側の依頼で企業再生を担うのか,債務者側の依頼で企業再生を担うのかの違いはある。

 サービサーの担う企業再生は一般的には前者であって,後者は弁護士等の専門家が担っている。では,後者の企業再生をサービサーが行うことができないのか。答えは,法的整理以外であれば「できる。」である。

2.サービサーに依頼するメリット


 サービサーに企業再生を依頼するメリットは何か。サービサーには特殊な権能がある。
 それは,債権譲渡を受けた債権について債権放棄(債務免除)ができるところである(債権譲渡を行った金融機関側も損金処理ができる。)。

 例えば,金融円滑化法によってリスケジュールした債務について今後元金を含め返済しようと計画しても困難な状況にある企業があったとします(金融機関から運転資金等の今後の融資を継続するのであれば,元金を含め返済を再開して欲しいと求められている。)。

 この場合,再度のリスケジュールを金融機関と交渉することと並行して企業再生をも検討しなくてはいけない。
 リスケジュールを承認してくれなく,元金の返済ができないとすればたちまち資金繰りが立ち行かなくなるからである。

 こういった局面でサービサーと共に金融機関に働きかけてサービサーへ債権を譲渡してもらうのである。債権譲渡が完了した後は,サービサーと条件付債務承認契約等(いつまでにいくら返せばいくら免除する契約)を締結して,元金のみを返済していけばよい。実にシンプルな事業再生である。

 もちろん,運転資金などの問題もあるが,債権者となったサービサーは企業を倒産させてしまうと利益が無くなるので払えないような支払方法(事業が継続できないような)を強制することにはならない。
 企業の事業再生の成功はサービサーにとっても利益となり運命共同体となるのである。

3.BAC企業再生チームでは・・・・

 幸いBAC企業再生チームの会員には,株式会社一富士債権回収取締役の安達一彦弁護士,そして株式会社YUTORI債権回収・取締役の私・原内直哉が在籍しており,サービサーを活用した事業再生については相談しやすい環境が整っている。

 顧問先企業でこれはと思う企業があればBAC企業再生チームへお気軽に相談いただければよりよい解決方法が選択できるかもしれない。企業再生の選択肢のひとつに加えてみてはどうだろうか。
以上




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月刊・企業再生サポート情報 bO78

★株主と経営者の高齢化問題
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2016.11.01


.株主の認知症と成年後見人議決権行使の問題

 現在進行形の実話である。M&Aの対象会社(以下、「対象会社」という。)の大株主が認知症となってしまっている事例がある。現在、この大株主の成年後見手続きを行っているが、非常に悩ましい問題があるので、レポートさせて頂きたい。

 まず、認知症となってしまった被成年後見人の議決権を、成年後見人が行使できるかという大問題がある。明確な条文や判例は今のところないが、家庭裁判所や法律家の一部の見解では、「成年後見人は、被成年後見人の議決権を行使することができない。」ということである。

 なぜなら、「議決権の行使」は、財産権の行使とは言えないためである(もっとも、成年後見人は、法定代理人なので、議決権を行使できるとの説もある)。
 この問題が、なぜ大問題かと言うと、今回の対象会社は、たまたま株式の譲渡につき制限を設けていない公開会社であったため、成年後見の審判が確定し、対象会社の株式の譲渡について家庭裁判所の許可が得られれば、第三者に対し株式譲渡することが可能となる。

 しかし、この会社が普通の中小企業のように株式の譲渡制限のある非公開会社であって、しかも、株式譲渡制限の承認機関が「株主総会」であったならば、話は少しややこしくなる。なぜなら、たとえ株式の譲渡につき家庭裁判所の許可が得られたとしても、対象会社の株式譲渡の承認が不可能となる可能性があるからである。

 もし、この大株主が対象会社の株式を100%有しているならば、株式譲渡の承認を得ることはできないかもしれない。成年後見人には、議決権を行使できる根拠がないからである(もっとも、もしこのような事例の場合には、議決権の行使が財産権の行使の一環と捉えられる余地がありそうな気がするが・・・)。

2.経営者の認知症

 こちらもつい最近の実話である。ある高齢者が不動産を売却しようとして、本人確認及び意思確認を行った。不動産仲介及び家族からは、「本人は耳が少し遠いが、意思表示は明確にできる。」とのことで、本人が現在入居している老人ホームに伺った。

 すると、本人は意思表示することはおろか、全く意思表示することが不可能であったため、成年後見制度を利用しないと不動産売買はできないとの説明を行い、成年後見制度を利用することになった。ここまでは、良くある話である。  

 しかし、この高齢者はある会社の代表取締役であり、この会社の代表者はこの人しかいないとのことであった。
このケースでは、成年後見の審判が確定するとこの高齢者は、取締役の欠格事由に該当し、取締役の地位を失い、結果として代表取締役の地位も失うことになる。たまたまこの会社は取締役会設置会社で、取締役が4名以上いたため後継者を、スムーズに選任することが可能な会社であった。しかし、もし、この会社が、取締役会非設置会社で、取締役が1名しかいなかったとしたら、後継取締役を選任することが難しくなる。場合によっては、裁判所に申し立てを行い仮取締役の選任の申立をしなければならなかったかもしれない。

 我が国は、高齢化社会が急速に進んでいる。高齢者の認知症に対して、今から早く手を打たないと、社会が上手く機能できなくなる恐れがあるかも知れない。



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2016年10月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO77

◆中・小・零細企業経営者のメンタルヘルス
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2016.10.01


 1986年に従業員150人の会社を破産整理。1年間、半年間と一人で苦しみ150人の従業員との別れは、自分の生涯において忘れてはならない光景として今でも心の奥に刻み込まれています。
 すべての個人資産を失い、2年後の1988年に起業。
 自分が体験した中小零細企業経営者としての悩みや苦しみを受け止められる数少ない「実体験者」だからこそ、受容と共感と支援ができる「リスク・カウンセラー」を目指し、事業再生、事業承継、時には事業閉鎖を、体験者だからこそ託された『ミッション』として、経営者の寄り添い人として関わっています。

1.第2回・小規模企業白書(2016年版)

 「小規模企業者」とは、常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業は5人)以下の事業者」と定義づけられていますが、この中に「法人企業」だけでなく「個人事業者」も含まれており、「中小企業白書」とは別の視点で統計調査が行われているものです。
 すでに「中小企業等経営強化法」が施行されていますが、果たして小・零細企業経営者の実態に沿うものなのか、税理士、コンサルタントなどの専門家としてとらえた経営者の心の内面の実態との乖離を受け止める機会にしていただきたいと考えます。
 また、急速に進む「超高齢化社会」の問題が危惧されている現状において、小規模事業主が、事業承継をしたい想いはあっても、小規模企業白書では『廃業』を考えている理由・・・・のデータが示されている。
A.高齢化のため(体力・判断力の低下など)・・・・が47.0%
B.業績が不振だ・・・・24.6%、
C.後継者問題(従業者等に適任者がいない)・・・・10.3%
D.景気見通しが立たない(現在の業績は問題ないが、今後業績悪化の懸念…7.3%

2.高齢化する経営者と債務問題

 2015年末の社長の平均年齢が61歳、60歳代社長が34.5%、70歳代社長が23.3%となっている。
 しかも、70歳代の社長が経営する企業の約2割が赤字だというから、廃業の理由が高齢化と業績不振が70%を超えているのは当然の現象なのでしょう。

 「中小企業等経営強化法」の施行があったいうのも、中小零細企業の約7割の企業が赤字またはそれに匹敵する状態という話題が流布していることからも、当然といえば当然のことなのでしょうが、小規模企業の中でも、高齢の経営者にとって適用を受けられる対象者はかなり絞られることでしょう。

 リスク・カウンセラーの視点では、小・零細企業の経営者の自殺が増加していますが、その原因の多くは負債に対する催促を受けても返済できない・・・・、ということが原因のようですが、経営状態の実情を家族に話せずに一人で悩み苦しんだ結果、精神と身体に異常をきたすことも十分考えられます。

3.経営不振で心が乱れ「ウツ病」に・・・・

 過去の相談においても、経営不振でクライアントが自殺した事例は数件ありました。家族から訃報を聴いたとき、悔しくて残念で・・・・ひたすら涙が出て止まりませんでした。
 ・経営再建のメドが立ったのに、気がついたらその場から居なくなり遠い別荘に行って自殺していた。
 ・相談に行きたいアポを取っていたのに、その日に来訪せず山中で自殺していた。
 ・社長か親族に遺書を残して睡眠薬自殺。初対面のご遺体に合掌をしてから詳細事情のスクリーニング開始。

 親族は、会社の経営不振のことは知っていたが、「家族達に何故もっと実態を話してくれなかったのか・・・・」「精神的にかなり病んでいた・・・・」「経営の実態を知るのが怖くて聴くことが出来なかった・・・・」というように、経営者が孤立して「うつ病」状態になっていたことに家族が寄り添い、早期に気づき、カウンセラーや専門家に相談したうえで共に解決することも出来たと思います。

 経営者の自殺は、武士が責任を取って割腹するというのではなく、債務金額の大小ではなく「心の病気=ウツ」によって自殺してしまうのです。
 重要なのは、経営者がうつ病にならないように予防するにはどうすれよいか、『早期発見・早期対策』のリスク回避の王道の言葉を思い浮かべて下さい。経営者の「うつ病」を予防すれば自殺を未然に防ぐことができますし、経営も、家族の平和も守ることができるのです。

4.「ウツ病」を理解しよう

 人間だれしも「うつ病」にかからない人はいないかも知れません。日本人で生涯において一度でも「うつ病」になったという人は、男性⇒10%、女性⇒25%だといいますから、高齢になったり、事業経営で悩んでいたりしたら、「ウツ病」になる確率は一気に高くなることでしょう。

 経営者の場合の兆候は・・・・、◇仕事が出来ない。⇒仕事の能率低下、ミスが多くなる。
              ◇人に会いたくなくなる。
              ◇死にたくなる。

 「ウツ病」に対する「周囲の理解」と「原因となるものを解決」することが大切で、「ウツ病」を早期に解決するには「十分な休養」がとれるようにしつつ、問題解決の理解者がいることこそ、早期回復のポイントになります。
 「抗うつ薬」を服用して治すという精神科医のアドバイスでは、抗うつ薬には何の依存性もないので、まずは、病気の治療を優先することも考えてみては如何だろう。

 「ウツ病」は精神面の弱い人がかかるものとは言い切れません。
 仕事熱心で、几帳面、他人から頼まれると断れない、世間体を気にする、気配り目配りが効く、忠実中正な人、バリバリ働く現役の経営者、普段は愚痴らず泣き言をいわない・・・・そんな人は、周囲の人が注視して下さい。

・睡眠不足で睡眠導入剤が欠かせない人
・食欲不振で好物でも食べたくない
・筋肉に力が入らない、だるい、おっくうだ
・人に会いたくない、楽しくない、悲観的に考える


 特に、小規模経営者は事業と家庭経済が同一であることは否めません。
 事業の債務超過は、家庭経済の破綻にも直結しますから、家族に対する責任感の強さが、生命保険金で穴埋めしたいなどと、誤った判断をすることも十分に考えられますので、家族は経営者の事業に対して傍観者の立場でいてはいけないのです。

経営が辛かったら…、家族が経営者の異常に気づいたら…、早期にリスク・カウンセラーにご相談下さい。



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2016年09月01日

中小企業等経営強化法について

▲中小企業等経営強化法について
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2016.09.01


 2016年7月1日に「中小企業等経営強化法」が施行されました。この法律では、中小企業・小規模事業者・中堅企業等を対象として、(1)各事業所管大臣による事業分野別指針の策定や、(2)中小企業・小規模事業者等への固定資産税の軽減や金融支援等の特別措置を規定しています。
 中小企業・小規模事業者等が、この法律に基づくメリットを享受する場合、「経営力向上計画」を作成し事業所管大臣に申請し認定を受けなければなりませんが、実質2枚の簡素な計画で良いとされています。また、経営革新等支援機関による支援も掲げられておりますので、会計事務所の顧問先に対するサービスの一環として取り組まれても良いものと思われます。


1.中小企業等経営強化法のスキーム
 (1) 事業分野別指針の策定
    各事業所管大臣が、事業分野ごとに生産性向上の方法などを示した指針を策定する。
 (2) 経営力向上計画の認定
    中小企業・小規模事業者や中堅企業は、自社の生産性を向上させるための人材育成や財務管理、    設備投資などの取組みを記載した「経営力向上計画」を各大臣に申請する。
    認定を受けた事業者は、様々な支援措置が受けられる。
 (3) 認定経営革新等支援機関による支援
    中小企業・小規模事業者や中堅企業は、認定定経営革新等支援機関(主に商工会議所、商工会、
    中央会、金融機関、士業等)による計画策定の支援が受けられる。

2.認定を受けた事業者への固定資産税の軽減措置
 (1) 中小企業者が取得する新規の機械装置について、一定の要件を満たした場合、3年間、
   固定資産税を1/2に軽減する。

3.認定を受けた事業者への金融支援措置
 政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証により、円滑な資金
 調達を支援する。具体的には、下記の通り。
 ・商工中金による融資・・・中堅クラス向け、中小企業者向け。低利融資
 ・中小企業信用保険法の特例・・・中小企業者向け。普通保険等の別枠の追加保証や保証枠の拡大
 ・中小企業投資育成株式会社法の特例・・・中小企業者向け。資本金3億円以上の先も対象
 ・日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット・・・中小企業者向け。信用状発行
 ・中小企業基盤整備機構による債務保証・・・中堅クラス向け。保証額最大25億円実施
 ・食品流通構造改善機構による債務保証・・・中堅クラス向け、中小企業者向け。
以上

経営強化法でご相談のある方は、企業再生支援チームかBAC事務局までご連絡下さい。






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2016年08月01日

月刊・企業再生サポート情報 bO75

★特許の取得とそのリスク
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2016.8.01


1.特許を取得する目的

 特許や商標(ブランド)の相談では、概ね、自社で新製品を開発したので、その成果を特許出願の形にしたいであったり、新しい商品やサービスの名称が決まったので商標出願したいといった依頼が多い。
 このように、特許を取得する目的の第1には、自社の製品を守ること(商標では自社の社名や商品やサービスを守ること)にある。これにより、自社の事業を守ることが、知的財産権の目的となる。
 第1の目的の裏返しにもなるが、第2の目的は、他社の排除である。他社が、同一製品や類似製品を販売することを阻止することである。

2.特許出願をするリスク

 権利を取って、自社の製品を守るのだから、他社を排除できるのは当然だとうと思うかもしれないが、ここには大きなリスクがある。
 まず、特許出願をしただけの出願段階では、特許権が発生しているわけではないので、出願後1年6カ月で強制的に内容が開示され、タダで、他社に自社の新製品の技術を教えてあげることになってしまう。
 いずれ権利化されて、他社を排除できるのだろうと思うかも知れないが、当然、審査の結果、拒絶になり、権利化できないリスクもある。特許査定の割合が概ね70%であることに鑑みれば、30%の権利化できないリスクは大きい。

3.特許になった後のリスク

 仮に、権利できたとしても、審査の過程で限定が必要になった場合には、その限定事項がずっとその権利には付きまとうリスクもある。すなわち、その限定事項を他社がやらなければ、侵害にはならないのだから、限定事項によっては、権利があっても他社にとっては容易に回避できて、無いのといっしょということになる。
 さらに、然程の限定もなく無事に特許になっても、いざ他社に権利行使をしようとすると、他社から権利無効の主張をされ、最悪、無効審判で本当に権利が無効となって取り消されてしまうリスクもある。
 すなわち、特許権者であれば、製造・販売・輸入・輸出・販売等の申出(展示)を含むすべての行為が独占できて、他社を排除できる。そのため、他社が無断で製造していれば、そのラインを止めることができし、無断販売も止めさせることができる(差止請求可能)。また、過去の侵害分に対しては、侵害による損害賠償も請求できる。
 しかしながら、これはすべて権利が有効である前提である。特許庁での審査では発見されなかった、より近い先行技術文献を発見すれば、特許自体を無効にして初めから存在しなかったということができてしまう。
 このような無効資料を発見するのは、不可能ではと思うかもしれないが、特許庁での審査経過を詳細に検討し、審査段階では見ていない特許分類等に着目することで、1件くらいの特許であれば比較的容易に潰す資料を準備することができる。
 余談になるが、私の所属している特許事務所でも、権利化の仕事量と同じくらい特許調査の仕事もしている。その中には、当然、このような無効資料を見つける無効調査も多数存在している。
 このように特許出願のリスクや特許になった後のリスクを考えると、そもそも、特許出願しないのが得策のようにも感じられるかも知れない。すなわち、ノウハウで秘匿し、特許出願しないという選択である。

4.ノウハウ秘匿のリスク

 しかし、ノウハウ秘匿のリスクは、その後、他社にノウハウの内容で特許を取得されるリスクがある。例えば、自社の工場内で使わる製造ノウハウなどは、ノウハウとして秘密に管理して、特許出願をしないことがあるが、製造ノウハウについて、後日、他社が製造方法の特許を取得してしまうという場合である。
 この場合には、まず、形式的には、他社の製造方法の特許を侵害する行為になり、場合によっては、権利行使される可能性がある。
 当然、その製造方法の特許出願前から、自社の工場内で実施しているので、その特許権に対抗できる先使用権を主張することができるが、先使用権の証明は、先使用権を主張する者、すなわち、そもそも特許出願をせずにノウハウ秘匿していたものに課せられる。
 そのため、特許出願をせずにノウハウ秘匿を選択するのであれば、将来、先使用権を主張するために、自社の実施内容や実施開始時期等の客観的資料を準備しておく必要がある。
 さらに、先使用権は、自社の実施の範囲に限定されるため、将来の事業の拡大等では、先使用権を主張できないリスクもあることに注意が必要である。

5.それでは、どうすればよいか?

 答えは、簡単である、『特許出願と特許とノウハウ秘匿』を使い分けることである。特許出願と特許とノウハウ秘匿には、それぞれ一長一短があるので、これらを組み合わせて、それぞれ使い分けることである。
 例えば、特許は取得しておきながら、常に、出願中で権利状態の確定しない特許出願を数件持っておくことで、競合他社は、確実に回避せざるを得ない特許に加えて、権利範囲が確定しない特許出願で開発方向を確定できないことになる。
 さらに、加えて、出願公開前の特許出願を持っておくことで、これから何か出てくるか予測不能な隠し玉が、競合他社の開発投資にブレーキをかけることになる。なぜなら、先に開発投資をした後に、出願公開されると、後発の重複開発・重複研究に投資をしたことになってしまうためである。
 ここに、ノウハウ秘匿を組み合わせることで、量産化技術など、コスト面での競争優位性を獲得していくことができる。ここで、ポイントになるのは、特許の取得や特許出願をした上で、ノウハウ秘匿をする点である。特許の取得や特許出願があることで、他社のノウハウ内容での特許出願やその権利化を封じ込めることができるためである。

6.最後に

 実際に、弁理士の力量は、クライアントのビジネスモデルや収益モデルから、早期に特許を取得すべき内容、特許出願で長く係属させておく内容、そして、ノウハウで秘匿すべき内容を切り分けて、事業における競争優位性を構築するところにある。





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